私有地に放置された車両は勝手に撤去できるのか?

お世話になっております。
先日、お客様から「所有している土地に知らない車が長期間放置されているのですが、どうしたらいいですか?」というご相談をいただきました。
正直なところ、私自身これまで放置車両の案件を直接扱ったことはなかったので、この機会に少し調べてみました👀
月極駐車場、空き地、会社の敷地、マンションの駐車場などを管理していると、こういった問題が起こることがあるようです。
結論からいうと、私有地に放置されている車両であっても、土地所有者が勝手にレッカー移動したり、処分したりするのは避けた方がよさそうです。
目次
自分の土地でも勝手に撤去できない?
「自分の土地に勝手に置かれている車なんだから、こちらで撤去してもいいのでは?」と思ってしまいますが、法律上はそう単純ではありません。
日本では、いわゆる「自力救済の禁止」という考え方があります。
簡単にいうと、権利を侵害されている側であっても、裁判所などの手続きを使わずに、自分の力だけで相手の財産を動かしたり処分したりすることは、原則として認められないという考え方です。
そのため、放置車両が邪魔だからといって勝手に移動させたり、スクラップに出したりすると、後から車両の所有者に損害賠償を請求される可能性があります。
こちらが被害を受けている側なのに納得しにくいところではありますが、車両も所有者にとっては財産ですので、慎重に対応する必要があります。
まず警察には相談しておく
私有地の放置車両については、原則として民事上の問題になるため、警察がすぐに撤去してくれるわけではないようです。
ただし、盗難車両の可能性や、事件に関係している車両の可能性もあります。
そのため、まずは警察に相談し、盗難届が出ていないか、事件性がないかを確認してもらうことは大切だと思います。
警察に相談したうえで、事件性がないということであれば、土地所有者側で民事上の手続きとして対応を進めていくことになります。
放置状況の証拠を残しておく
放置車両の対応で重要なのが、証拠を残しておくことです。
後で所有者に通知を送ったり、場合によっては裁判手続きに進んだりすることを考えると、「いつから」「どこに」「どのような状態で」放置されているのかを説明できるようにしておく必要があります。
例えば、次のような資料を残しておくとよさそうです。
・車両全体が分かる写真
・ナンバープレートが分かる写真
・駐車場や土地全体との位置関係が分かる写真
・放置場所の地図や位置図
・放置されている日付が分かる記録
・可能であれば、複数日にわたる写真
特に、裁判などになった場合には「本当に放置されていたのか」「どのくらいの期間放置されていたのか」が問題になる可能性があるので証拠を残しておきましょう。
所有者を調査する
次に必要になるのが、放置車両の所有者や使用者の調査です。
普通自動車の場合は、運輸支局で登録事項等証明書を請求することで、所有者や使用者を確認できる場合があります。
通常、登録事項等証明書を請求するには、自動車登録番号と車台番号が必要ですが、私有地に放置されている車両については、一定の資料を添付することで、自動車登録番号のみで請求できる取扱いがあるようです。
この場合には、放置車両の状況が分かる写真や、放置場所の位置図などを添付して、私有地に放置されている車両であることを説明する必要があります。
軽自動車の場合は、普通自動車とは手続きが異なり、軽自動車検査協会で検査記録事項等証明書の手続きが関係してきます。
ただ、軽自動車については普通自動車よりも確認できる範囲や必要書類が異なることがあるため、事前に軽自動車検査協会へ確認してから進める方がよさそうです。
ナンバープレートがない場合
厄介なのが、ナンバープレートが外されている車両です。
ナンバーが分からない場合でも、車台番号が確認できれば調査できる可能性はあります。
ただし、車台番号まで確認できない場合や、車両の状態が悪く確認が難しい場合には、所有者の特定がかなり難しくなります。
このような場合は、盗難車両の可能性も含めて警察へ相談し、そのうえで弁護士などに相談する流れになると思われます。
所有者が分かったら内容証明郵便を送る
所有者や使用者が分かった場合には、まず任意で撤去してもらうよう通知することになります。
このときによく使われるのが内容証明郵便です。
内容証明郵便とは、「いつ、誰が、誰に、どのような内容の文書を送ったのか」を郵便局が証明してくれる制度です。
放置車両の撤去を求める場合には、
・どの土地に放置されているのか
・どの車両のことなのか
・いつ頃から放置されているのか
・いつまでに撤去してほしいのか
・撤去されない場合は法的手続きを検討すること
などを記載することになります。
内容証明郵便を送ることで、後から「撤去を求めた」という事実を証拠として残しやすくなります。
なお、内容証明郵便だけでは「相手に届いたこと」までは別問題になるため、配達証明も付けておく方が安心だと思います。
それでも撤去されない場合
内容証明郵便を送っても撤去されない場合には、最終的には裁判手続きに進むことになります。
具体的には、土地所有権に基づいて、放置車両の撤去を求める訴訟を提起することが考えられます。
また、放置されていた期間について、駐車場使用料相当額などの損害賠償を請求できる可能性もあります。
ただし、実際にどこまで請求できるかは事案によりますし、裁判となると行政書士の業務範囲を超えてきます。
この段階では、弁護士へ相談する必要があります。
所有者と連絡が取れない場合
登録事項等証明書などで所有者の住所が分かったとしても、実際にはその住所に住んでいない、郵便が届かない、連絡が取れないというケースもあるようです。
このような場合には、住所の調査や、公示送達といった裁判上の手続きが問題になることがあります。
公示送達とは、相手の所在が分からない場合に、裁判所の掲示などによって書類が送達されたものと扱う制度です。
ただし、これはかなり専門的な手続きになりますので、所有者と連絡が取れない段階まで進んだ場合には、早めに弁護士に相談した方がよいと思います。
公道上の放置車両とは対応が違う
放置車両といっても、公道上にある場合と私有地にある場合では対応が異なります。
公道上であれば、道路交通法上の違法駐車や道路管理上の問題として、警察や道路管理者が対応する場面があります。
一方で、私有地内の放置車両は、基本的には土地所有者と車両所有者との民事上の問題になります。
この違いを理解しておかないと、「警察に言えば撤去してくれると思っていたのに対応してもらえなかった」ということになりかねません。
もちろん、私有地であっても盗難車両や事件性が疑われる場合には警察への相談が必要です。
行政書士が関われる部分
今回調べてみると、行政書士が関われる部分もありますが、行政書士ができるのは所有者の特定と、せいぜい内容証明までですので、現実的な解決にまではいかない可能性が高いです。
例:普通自動車の登録事項等証明書の請求、放置車両に関する資料作成、内容証明郵便の文案作成
相手方との交渉、訴訟、強制執行などは弁護士の業務範囲ため、最初から弁護士に相談したほうが良さそうですね😫
放置車両は、見た目以上に法的な注意点が多い分野だと感じました。
同じようなことでお困りの場合は、勝手に動かす前に、まずは専門家へ相談されることをおすすめします。
今回はこのへんで。
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