子の父を決める民法の嫡出推定について

お世話になっております。
先日のニュースについて、興味深い内容だったので時事問題について。
法相の諮問機関である法制審議会の親子法制部会は先日2月9日、この父を決める民法の「嫡出推定」を見直す中間試案をまとめ、離婚後300日以内に生まれた子を「前夫の子」とみなす規定の例外を設け、母が出産時点で再婚していれば「現夫の子」とする内容と離婚時に妊娠中の女性の100日間の再婚禁止期間の撤廃についての最終案を法相へ答申しました。
法務省は来年の通常国会への改正法案提出を視野に作業を進めているとのこと。
今回のニュースで何が問題になっているのか、嫡出推定についてご説明させていただきます!
目次
嫡出子と非嫡出子とは?まずは言葉の整理!
●嫡出子(ちゃくしゅつし)
法律上の婚姻関係にある男女の間に生まれた子供のこと。
●非嫡出子
法律上の婚姻関係がない男女の間に生まれた子供のこと。
●認知
嫡出子でない子に父親から父子関係を認めること。
※母子関係については懐胎(妊娠)・分娩の事実により親子関係が推定されます。
●認知されていない非嫡出子
結婚をしていない男女の間で生まれ、父親から認知をされていない子供のこと。
●準正
非嫡出子に対してその後両親が結婚することで嫡出子の身分を得ること。
※婚姻準正 父が認知した子がその父母の婚姻によって嫡出子の身分を取得する
※認知準正 認知を受けていない婚外子が、父母の婚姻後に、父親によって認知され、その時から嫡出子の身分を取得すること
嫡出推定制度について
嫡出子としてどのように推定されるかによって親子の関係を否認する場合の訴えの方法が変わってきます。次の4つのパターンに分かれます。
推定される嫡出子 | 妻が婚姻中に懐胎した子は、夫の子と推定する。 | 実は夫の子でなかったという場合に争いがあれば、夫が子の出生を知った時から1年以内に嫡出否認の訴えによって親子関係を争うことになる。 |
婚姻成立の日から200日後、又は、婚姻の解消若しくは取消の日から300日以内に生まれた子は、婚姻中に懐胎したものと推定する。 | ||
推定されない嫡出子 | 婚姻成立の日から200日以内に生まれた子供は、嫡出子には該当しますが『推定される嫡出子』となることは出来ません | 親子関係不存在確認の訴えによっ嫡出子の身分を覆す。期間制限はなく訴える利益のある者であれば誰でも提起する事ができる。 |
推定の及ばない子 | 形式的には法律上の嫡出推定が及んでいるが、そもそも夫の子を懐胎することが不可能だった場合。何年もの間、夫が刑務所に収監されていたようなとき。 | |
二重の推定が及ぶ嫡出子 | 母親が再婚禁止期間に違反して再婚し、その後に出産したことにより、嫡出の推定を重複して受けるとき。 | 父を定める訴えにより、裁判所がこの父を決定する。 |
嫡出子と非嫡出子の法定相続分
平成25年12月5日の法改正まで、法定相続分を定めた民法の規定のうち非嫡出子の相続分を嫡出子の相続分の2分の1と定めた部分が改正されて、嫡出子と嫡出でない子の相続分を同等となりました。
再婚禁止期間とは?
女性が再婚する場合、元夫との離婚後100日は再婚が禁止されています。
民法733条(再婚禁止期間)
1 女は、前婚の解消又は取消しの日から起算して百日を経過した後でなければ、再婚をすることができない。
2 前項の規定は、次に掲げる場合には、適用しない。
一 女が前婚の解消又は取消しの時に懐胎していなかった場合
二 女が前婚の解消又は取消しの後に出産した場合
再婚禁止期間は平成27年12月16日の最高裁判決で女性の100日超部分を憲法違反となったのを受けて、離婚後6か月を経過しないと再婚できないと定めていた期間を100日に短縮されました。
女性のみ再婚の禁止期間を定めている理由は?
離婚後にすぐ再婚できるとしたら、女性が妊娠した場合にその子供が元夫の子なのか再婚後の子なのかがすぐに推定できないという状況に陥ってしまいます。
そうなると、父子関係をめぐる紛争が発生してしまうかもしれません、子どもの権利・利益を守るためにも、そのような状況に陥ってしまわないように再婚禁止期間が定められています。
上記の理由から、離婚時点で妊娠していない事実が確認できる場合や離婚後に妊娠したことが認められる場合には、再婚禁止期間の適用例外とされます。
まとめ
嫡出推定や再婚禁止期間について賛否分かれますので、何が良くて何が悪いということは一概には言えません、しかし、これらの法律ができた趣旨を考え、子どもを不要な争いや無戸籍などの問題に巻き込まないためにも正確な知識を確認する必要があります。
今回のニュースの内容でどのように変わるかは分かりませんが、法律を見直すいい機会になるのではないでしょうか!
また、行政書士試験の受験生は民法や憲法(判例)でも度々出題されている重要論点ですので参考にしてもらえると幸いです。